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2013年のウルトラトレイル・デュ・モンブラン(UTMB)完走記です

UTMB完走記 10:レーススタート!

 

さすがは、世界の舞台だ。

10つある山のうち、最初の山からさっそくUTMBの洗礼を受ける。

「これ、1つ目から、ちょっち勾配キツすぎないかい(´・д・`)」

ウルトラマンのカラータイマーではないが

呼吸が一定以上に荒くなると、

まだ完治してない気管支炎の咳がわかりやすくゴホゴホと咳が出てくる。
こりゃ、この先もなかなか楽しませてもらえそうじゃないの(;・∀・)。

 

2300名ほども出る大会だけあって、

山道は少し混雑しがちで、マイペースが出しにくい。

慌てない。まだまだ、長い長い道のりなのだ。

 

1つ目の山を越え、2つ目にさっそく「前半のヤマ場」Croix du Bonhommeへ。

すっかり陽もくれて真っ暗闇なのに、山を登る道すがらでさえ、

応援してくれる人達が立っている。

なんて有り難いんだ( ;∀;)。

 

長い長い上り坂をひたすら立ち止まらず、

ヘッドライトで照らされた足元を見つめながら

ゲホゲホと一歩一歩を繰り返す。

 

ふと、上を見上げて、思わず息を呑んだ。

はるか彼方の上方へと、ジグザグにヘッドライトの「道」が連なっている。

点に見えるひとつ一つのライトも、1人の選手が今まさに喘ぎながら登っているのだ。

みんな、一緒なんだ。

よし、まだまだ、これからだ。


44km、前半のヤマ場Croix du Bonhommeの山頂にたどり着き

ようやく大好きな下りだ。

外国人の選手は下りが得意ではないのか、

下りでは一気に選手を抜き去りながら気持よく下っていく。

 

通常のロード(舗装路)のレースに比べ、

防寒具やら補給食やら荷物が多いトレイルのレースでは、

少しでも軽くするため、できればヘッドライトも軽いものにしがち。

 

でも持論では、ライトは多少重くても明るいに越したことはない。

夜の下り坂ではスピードを保ちながら駆け降りるには、とにかく明るさが重要だ。

着地場所を少しでもミスれば、一気にコケて、下手をすればケガでリタイアだ。

 

ひたすらにライトに照らされる地面を集中して見つめながら下って行くと

遠くからカランコロンと、気持ちの良い鈴の音が聞こえてくる。

ようやくエイドが近づいて来たのだ!

 

すでに日が越えて2日目の朝2時前に、

49kmのLes Chapieux のエイドへたどり着く。

まだまだゲンキ。

集中して走れていることもあり、全く眠くなく、とにかく楽しい!

 

到着時の様子。

動画内で、ひたすら「シャンペに到着」と言ってますが「シャピュー」の間違いですw
「シャンペ」は122km地点です。まだ約50km地点ですw

 

エイドで、ヌードルやらパンやらビスケットやらを食べ、

1ヶ月ずっとガマンしてきた、カフェインの入ったコーラもゴクゴク。

長時間のレースでは、脚も大事だけど、

何より内臓も大事だ。

単純計算では、UTMBレース中で計2万5千キロカロリーも消費する。

つまり、それだけの食事を胃腸に流し込み、ひたすら消化し続けなくてはならない。

内臓だって、筋肉なのだ。

ただでさえ、走りながら胃腸はチャプチャプいってるのに

「もう、そんなに消化できませんよ(´・д・`)」ってくらい、

ひたすらに食料を流し込まれ続けるのだ。

食べられなくなったら、いくら脚が残っていても、オワリである。

「食べられる時に、とにかく食べる」

それが、長距離レースの鉄則。

エイドの食事も美味しく食べられている。

嬉しいコト続きじゃないか。

よし、あと2つ山を超えれば、中間地点のクールマイヨールだ。

鏑木さんが走るUTMBを特集したNHK番組で何度も目にした、

レース中最大のエイドステーションだ。

番組の中では

トップ選手でさえそこで胃腸の不調で倒れこんだり

フラフラになりながら、家族の応援を背になんとか立ち上がり、次の山へ向かって行ったり

様々なドラマが描かれている場所だ。

今のところ有り難いことに、咳が少しでる以外は

カラダもキモチも元気いっぱいに走れている。

クールマイヨールでは

サポートしてくれている、富士トレイルランナーズ倶楽部の中尾さん、小柴さんも待っていてくれるハズだ。

そして、こっそり仕込んである、ウサちゃん帽子もドロップバックで待ってくれている。

よーし、待ってろよ!クールマイヨール!

 

つづく

UTMB完走記 11:ウルトラマラソンの七不思議

 

「長距離レースは胃腸の闘いでもある」

「食べられる時に、食べるべし」

そう語った。

小生は、確かに、語った。

 

賢い読者の皆さまのことだ。

皆まで言わずとも理解して頂けるに違いない。

 

「上から入ったものは、下から出てくるものである」

「万物は、引力を有す」

そう語った。

ニュートンは、確かに、語った。

 

長距離レースで、自分の状態を冷静に判断する

大事なバロメータは、

「屁」

である。

 

フランス語と違って、読み方は間違ってない。

「へ」

である。

 

そろそろワタクシに殺意を感じる読者もいらっしゃるかもしれないが

至って、真剣なのだ(`・ω・´)。

 

ヘタな時は、いや、快調ぶっこきな時は

100kmマラソン中に、

30-40回も「屁」が出ることすらあるのだ。

 

そんな時は、

「今日も胃腸がゲンキだぞー」と

思わず(・∀・)ニヤニヤしてしまうものである。

 

もちろん、その直前に後方にランナーが居ないか確認するのは言うまでも無い。

やむを得ない時だけは、斜め45度にカラダを傾け、

誰も居ない沿道に向かって噴射するのがオトナのマナーというものだ。

 

 

……さて、

UTMBで快調に坂道を下りながら、

「ジェットストリームだぜ(`・ω・´)」と加速させながら

噴射を繰り返していた時だった。

 

「これ以上の噴射は、危ない」

 

これまでの4年のラン人生で30回ほどのウルトラマラソンを走る小生が、

かねてより

「ウルトラマラソンの七不思議」

と呼んで憚らない現象の一つが、

「気体から個体への変化は、突然に、しかも大群にてやってくる」

ことだ。

 

他の「6つの不思議」については、長くなるのでこの辺で…。

 

坂道を下りながら、ニュートン万有引力の法則が

文字通り「重み」を増しながら強まっていくのを感じる。

前半のヤマ場の後に、こんなヤマ場が待ち構えているとは。

さすがは世界の舞台である。

64kmのエイドステーションLac Combalに辿り着くも、

そのままエイドの出口へ直行し、1m四方の秘密の小部屋へと駆け込む。

絶賛ウ◯コ中のトイレより。大丈夫です。映像は乱れておりません(`・ω・´)。

 

小部屋から出てきた時の

ココロもカラダも、なんと軽やかなことか。
そうして、いよいよ空も美しい朝焼けですっかり明るくなった時

石畳の路を、石造りの家々に囲まれた素晴らしい街並みを抜けて、

朝7時台というのに沢山の歓声で賑わう

77km地点のクールマイヨールのエイドへ辿り着いた。


クールマイヨール街並みをエイドに向かう様子

眠気もほぼゼロで、カラダもゲンキで、

快調に走れている。

なにより、楽しさ一杯だ。

エイドでは、中尾さん、小柴さん、

そして小柴さんのお母様や息子のたくとクンまで待ち構えてくれている。

スタート地点のシャモニーからモンブランを越えて反対側のクールマイヨールまで、

何時にたどり着くか時間を読みにくい中、早朝に待ってくれているのだ。

なんて、有り難い。

 

事前に預けておいたドロップバックを開き

後半用のカフェイン入りエナジージェルを仕込み

2晩目に向けて、ライトの電池を交換する。

 

クールマイヨールを超えると、

すぐに距離22km、標高差1,300m以上の

「後半のヤマ場」グラン・コルフェへ向かっていくのだ。

スタートから、ここ中間地点のクールマイヨールまで

約15時間ほど。

ちなみに昨年のUTMFでは、34時間弱で完走することができた。

その経験から、

「UTMBは、10km距離も長いし累積標高差も1,000m以上高いから、

UTMFより最低でも3-4時間はかかるハズ。

38時間以内で完走できれば、悪くない。」

そう目標を定めていた。

 

クールマイヨールは、77kmと、厳密には中間地点より7kmほど手前ながら、

15時間で辿り着けているのは、悪くないハズ。

順位も、そこそこ上げてきたんじゃないか?

しっかり食事も摂る姿をカメラで撮影してくれながら小柴さんに、ふと聞いてみる。

 

「今って、ボクの順位どのくらいですか?」

 

少なからず、ショックを受けた。

 

「さっきまで千数百位で中盤あたりだったけど、900番台まで上がってきてる」

 

「え!? そんなに(後ろの順位)?? 全部で、何人走ってるんでしたっけ?」

 

選手は、全部で2千数百人ほどとのこと。

昨年のUTMFでは、約800名ほどの中、100位ちょっとで完走できた。

参加人数が3倍のUTMBでは、300位位に入れたら万々歳。

ところが、なんと、中盤より少し良い程度の順位じゃないか。

改めて、世界の舞台を実感する。

「ここまでも、特に下りはゴボウ抜きの連続なのに、なんて層が厚いんだ。」

一喜一憂していても仕方がない。

まだまだ、先は長いのだ。

後半のヤマ場へゲンキ一を取り戻すべく、

いよいよ、ドロップバックよりウサちゃん帽子を取り出す。

「これから、日中に差し掛かって暑そうだから、ウサちゃん帽子はゴールまで取っておこうかな」

というボクに

「こっから、かぶって行った方がいいわよ!」という小柴さんの声に後押しされ

グッとウサちゃんをアタマにセットし、エイドを出発する。

ウサちゃん姿のボクに、これまで以上に多くの声援を浴びて

俄然やる気もアップでダッシュで飛び出していく。20130831_080022-001
クールマイヨールにて、ウェア新調の図

この先、後半のヤマ場、グラン・コルフェを越えさえすれば、

あとは流れにのってイケるハズだ!

順位は、予想を遥かに超える低さだけれど、

これから後半で上げられるとこまで上げてやる。

 

つづく

UTMB完走記 12:後半のヤマ場へ

 

クールマイヨールから5kmで800mほどゼェハァ登り、

82km地点のRefuge Bertone ベルトーネにたどり着くと

ウワサ以上の素晴らしいモンブランの姿が、

朝日に照らされてそびえ立っている。

とにかく、山がデカい。そして、美しすぎる。

17068428

そこからしばらくは細かいアップダウンはありながらも、

10kmほどの区間、走りやすいコースが待っている。

しかも、信じられない景色の中を走り続けられるのだ。

少し下を覗くと、あまりの崖っぷりで眺められないのだが

とにかくすごい高度感だ。

 

 

そんな景色の中を進んでいくと、

天に向かって切り立つように

険しくそびえ立つ岩山が見えてくる。

 

「あれが…グラン・ジョラスじゃないだろうか…」

 

レース愛称でもある「ハセツネ」こと長谷川恒男さんが

世界ではじめて単独で冬季登頂を成功させた、あの壁である。

 

夏場でも、どうやって登るのかイメージが沸かないほどの

岩壁である。

 

実は、クールマイヨールの手前でも

「これが、ウワサのグラン・ジョラスではないでしょうか…

全然違うかもしれませんが(`・ω・´)」と

ドヤ顔でビデオ撮りでもレポートをした岩山があった。


クールマイヨール到着前の「疑惑のグラン・ジョラス」レポート動画

 

後で中尾さんから

 

「それ、グラン・ジョラスじゃないよ。

後でもっと険しいのが出てくるから」

 

と言われるまで気が付かなかったが、

いずれにせよ、とても人が登るような岩山に見えない。

それも、実はグラン・ジョラスじゃないかもしれないのだが(´・д・`)…

 

とにかく、そんな切り立った岩肌が、目の前に何重にもそびえ立つ

そんな景色を間近に走ることができるのだ。

 

そうして

エイドステーションの名前もテキトーにレポートしまくりながら、

いよいよ、後半のヤマ場、グラン・コルフェへと差し掛かる。

 

「ちょw、あれ、あまりにデカ杉でしょ。

あの山を、やるというのかい/(^o^)\」

 

登りは、とにかく、休まないコト。

どれだけ苦しくても、少しずつでもいいので、

登り続ける。

そうしていれば、必ずいつか頂上にたどり着くのだ。

 

上を見ずに、ひたすらに足元を見てゲホゲホゼェハァ登り続け

さすがにたまらず立ち止まり、ふと見上げて愕然とする。

 

遥か上方の山の頂き付近に、ノミの行進のように連なる選手たちが見えるではないか。

 

「いいや、騙されるな。あの山頂っぽく見える所に辿り着いたら

また向こうに、更に山道が続いているに違いない」

 

大事なコトは「常に、より悪い方に考えておく」ことだ。

そうすれば、いざ悪い方に転がっても、キモチで負けない。

 

ヘタに良い方にばかり考えていると、そうでなかった時の精神的ダメージが大きいものだ。


グラン・コルフェ途上にて
ひたすら、呼吸を意識する。

ただでさえ、酸素は薄いのだ。

 

延々と続く坂道を登り続け「山頂っぽく」見えていた場所にたどり着くと、

嬉しいことに、もうすぐ先に山頂を示すスタッフ小屋が目に入る。

99km地点、グラン・コルフェにたどり着く!

 

「いやーーー、長かったーーー」

DSC00059

 

しっかし、素晴らしい景色だ。

そして、ここから先は、いよいよ3カ国目、

イタリアからスイスに突入だ。

 

そして20kmほども続く長い下りの先に、

122km地点、中尾さんたちが待っているChampex-lac シャンペの街へたどり着ける。

 

「シャンペ着いたら、残りは46km地点。ようやくゴールが見える感じかな」

 

スタート前にそう言うボクに、UTMBをよく知る方から

 

「シャンペにようやく辿り着いて、まだ50km近くも残るのかとリタイアする人、

意外に多いのよ」

 

と事前に聞かされていた。

 

とはいえ、シャンペにたどり着けば、

残るは「(比較的)小さい(ように感じる)山3つだけだ」

よし、得意な下りで、一気に順位も上げてやる。

 

つづく

UTMB完走記 13:「とにかく、ウシが、憎い」

 

UTMBの後日談を聞かれるならば

おそらく第一声は

「とにかく、ウシが、憎い」

そう答えるだろう。

 

この半年間ものあいだ、

世界で活躍するランナーにベジタリアンが多いのに影響を受けて

「こりゃ、試してみる価値がありそうだ」と

実際にベジタリアン生活を続けてきたからじゃあない。

 

何度も、見事にコロっと騙されたのだ。

ウシのヤツらに。

 

長らく走り続け、

「もう、そろそろエイドが近いハズだ。

いや、「悪い方に考えろ」だ。まだまだ先だ」

そう幾度と無く自分に言い聞かせながらガマンして走っていると

ふと遠くから聞こえる、あの軽やかな「カランコロン」という鈴の音。

 

「やった! ようやく、エイドが近づいてきた( ;∀;)!」

そう思って、何度

 

「実は、オレたちの首に着いた鈴でっした」

 

とあざ笑うウシ達に泣かされたコトか。

 

さも、人間様が鳴らすような軽快なリズムで、

目を細めてカランコロンと音を鳴らし続けやがるのだ。

 

「オマエら、

ちょっとはウシらしく「モー」とか鳴き声出せよな!

黙って鈴鳴らすだけだから、何度も騙されるじゃないか。

ウシの分際で!」

 

後半のヤマ場グラン・コルフェを越えて、シャンペまでの23kmに及ぶ長い長い道のり。

わざわざ、1500mほども下って、500mほど登った先にたどり着けるのだ。

 

2日目も日が暮れて薄明かりな空の中、ふと、ラピュタのように空に浮かぶ街明かりが視界に入る。

 

「まさか…あれ、シャンペじゃないよな…500mって、あんな高いのか…」

 

そんな街明かりへひたすら登る最中、

またしても、あのカランコロンの音が聴こえたって、

もう騙されやしない。

 

こちとら、もうすぐ39歳を目前の、いいオトナなのだ。

 

何が楽しくって、ウシに向かって

 

「やっぱり、オマエらだったのか!

この、ウシ! ウシが( ;∀;)!」

 

と罵ろうものか。

 

レース2日目の18時過ぎ。

スタートから26時間近くが経過し、

122km地点、ようやくシャンペのエイドに辿り着く。

 

先回りして待ってくれていた中尾さんたちと

約10時間ぶりに再開し、ホッとする。

聞くと、なんと順位が600位台まで上がっているらしい。

 

クールマイヨールの時は、1000位ほどだったので

400名ほども抜き去ったハズだ。

とはいえ、まだそんなにもたくさんの選手たちが

先を行っているのか。

残すは46km。

もう、流れに沿って3つ山を超えるだけだ。

幸い、眠気もほとんど気にならない。

 

だいぶ脚は削られているものの、

集中して走り続けられているからだろうか。

 

168kmものコース上、15箇所ほどのエイドステーションのうち

選手のサポーターが中に入れるのは5箇所しか許されてない。

スタートからシャンペまでの122kmでは、

たった2箇所のみだった「サポート可能エイド」が、

シャンペを含めゴールまでの46kmで3箇所も集中する。

 

それだけ、選手たちも限界に近づいてくる時間帯ということだ。

「次は、トリアン(Trient)のエイドで待っているから。5時間後の、23時半ターゲットね」

僕の様子を気遣うようにしながらカメラを回す中尾さん。

 

「小野クン。Bovineの頂上には、ウシがいるから。楽しみにしててね」

 

「ウシ……ですか(´・д・`)。ありがとうございます……。」

 

そう中尾さんに励まされ、残り3つの山の1つ目、Bovineへとエイドを出発する。

あと3つ、やれる所までやってやろうじゃないか。

つづく

UTMB完走記 14:この、ウシが( ;∀;)!

 

122km地点のシャンペを出発し、Bovineの山を越え

Trientまでは16.5km。約10km登って、6.5km下るだけだ。

さすがに脚にチカラが入らなくなり、

ただガマンにガマンを重ね、少しずつ登っていく。

すっかり二晩目に突入し、

チンタラ登っていると一気に睡魔に覆われそうになる。

ひたすら深く呼吸を意識すると、脚にチカラが少しもどり

ペースが上がるとともに、脳に酸素が渡り眠気を吹き飛ばせる。

残り3つ、今まで超えてきた山に比べて、そんなにデカい山じゃないんだ。

もういい加減に、山頂が近いはず。

やったぞ!

暗くてよくワカランけど、Bovineっぽく何かが書かれた山頂っぽいサインがあるぞ!!

 

「あれ…? 山頂に居るはずのウシが、居ないけど…」

まぁ、気にしない。ようやく、下り始めたぞ!

と、しばし下って行くと、

何だかありえない高さに、ヘッドライトのゆらめきが見えている。

 

「ちょ、何この急勾配/(^o^)\」

そうなのだ。Bovineは小さな峠で、その先にPortaloという山頂まで

もう一山存在していたのだ。
スクリーンショット 2013-09-04 18.14.34

地図上ではわずかな距離と勾配なのだが、

この状態で喰らうと、完全にココロが折れそうになる。

何人もの選手に追いぬかれ、

ふと思い出す。

「この先に、ゴールまで、まだ2つ山が残っているんだ。

次のエイドにたどり着く頃には、ギブアップしてしまうかも…」

「すでに132km」を越えているのにも関わらず、

「まだあと36km」という事実の方が重く心にのしかかる。

眠気に包まれそうになる度に深い呼吸をするも、

その都度、ゲホゲホと咳が出る。

少しボンヤリとした意識の視界の先に、

なにやら標識が目に入る。

「ウシだ( ;∀;)!」

これまでも何度か見かけた「ウシに注意」の標識だ!

つまり、本当の山頂が近いということだ!

なになに?

 

「必ず、ゲートを閉めること」との注意看板。

 

なんだろう、イミがワカラン。

ゲートなんて、無いし。

 

暗闇の中、遠くから、かすかにカランコロンの鈴の音が。

やったよ! 可愛いウシ達が待つ山頂がもうすぐだ!

 

ゴメンよ、ウシたちよ。

これまで「この、ウシが( ;∀;)!」とか、悪口言って。

ようやく辿り着いた山頂付近にて、少し様子がオカシイことに気がつく。

 

ウシが、多すぎるのだ。

そして、「モーー」とかではなく、

何やら「ヴァヴォーーーー!!」とか叫びながら

あちこちで走り回っている。

闇夜の中、何度か黒い物体が、コースがすぐ前方を横切って行く。

真っ黒なドでかいウシが、突進しながらコースを横切り下ったり登ったりしているのだ。

可愛いカランコロンの鈴の音を鳴らしながら。

 

「え、えーと、、、さっきの『必ず、ゲートを閉めること』って

このウシ達のことじゃ無いのかしらん(´・ω・`)?

間違って、ゲート開きっぱで、

ウシら、離し飼い夜会フィーバーなんじゃないのかしらん(´;ω;`)」

 

徐々にウシ達の群れが近づくにつれ、

人ひとりがようやく通れるコースが

ご立派な角を携えた巨大なウシたちが

何匹もたむろして遮られているのが目に入る。

ヘッドライトの明かりがウシの顔面に直射し

ただでさえ細いウシの目が、コチラを睨みつけるようにさらに細くなる。

「ぁっ、あのー、ウシさん。失礼しましたっ。

ま、眩しかったですよね。失礼しゃしたーっ!( ;∀;)」

 

そんな中、突如「ヴォーーーー」という鳴き声とともに

すぐ近くの暗闇でズドッズドッと走りだすウシの足音が響いてくる。

それまで、さんざん大人しく鳴き声立てずに

カランコロンしてたのに(´;ω;`)ウッ…。

ウシさん達のおじゃまにならないよう、

ウシさんの前を決して通らぬよう

でも、ウシさんの後ろ脚が届かぬだけの距離を保ちながら

なんとかコースの脇をよじ登りながら、

うつむきながら、ウシの大群を通り抜ける。

ヘッドライトに照らされた自分のウェアを見て

一気にカラダが凍りつく。

「オレ、ウシの大嫌いな、真っ赤なレインウェア着てるじゃん…

しかも、真っ赤な目した、

バカみたいなウサギの帽子までかぶって(TдT)……」

 

一瞬
「邦人男性、ヨーロッパの山中で、ウシに轢かれて死亡」

そんな新聞の見出しがアタマをよぎる。

なんとかソローリソロリと「ウシのフィーバー会場」を抜けた直後は

おそらく、UTMBで最も速いペースで駆け抜けた(逃げた)のではないだろうか…。


ウシゾーンを抜けた直後の映像。かなり声にチカラが無い……

あとは、中尾さん達が待ってくれているTrientのエイドまで

なんとか降りていこう。

 

つづく

UTMB完走記 15:キモチの問題

 

BOVINEの山とウシを乗り越え

2日目の22:13、138.9km地点 Trient トリアンのエイドにたどり着く。

口をつくコトバが

「いやーーー、長かった!」

しか出てこない。

すでに走り始めて約30時間。

ここは、食事やら補給やらしっかり休みを取ってから

残り2山、なんとか乗り越えよう。

レース後にわかったのだが、この時点で順位は604位。あと約30kmだ。

 

あらためてコースマップを見ると

「残り3山」のうち、いま超えてきた「もうダメかも」と感じたBovineの山が一番小さく

次の2つ目Catogne、

そして最後3つ目LA TETE AUX VENTS

がより勾配も標高差もキツいではないか( ;∀;)。

スクリーンショット 2013-09-05 12.45.49

でも、何度も「もうダメだ」と思ってから復活する体験が、過去何度もあるじゃないか。

大丈夫だ。しっかり食べて、しっかり休もう。

 

人のカラダはホントに不思議なもので、

さっきまでボロボロになっていた足もカラダも

気力さえ元に戻れば、一気に力がみなぎってくる。

 

「ほっんと、キモチの問題なんだよな」

(・∀・)ニヤニヤがとそう独り言がでてしまうくらい

2つ目の山、Catogneを全力で登りまくり、

スタート直後ではないかと思うくらいにゲンキに下って行く。

さっきまで、リタイアもアタマにちらついていた

同じカラダとは思えないくらいにパワーに満ちている。

約10kmの道のりを、700m登って800m下り、

レース3日目の朝1:15、149km地点のエイド、Vallorcineにたどり着く。

この時点で576位。2時間半で30人ほどを抜いた計算だ。


149km地点のエイド、Vallorcine到着の様子

残りゴールまで18.5km。残すは1山。

エイドも山のピークを超えた先に1箇所残すのみだ。

一睡もせずに、すでに2晩目を越えようとしている。

復活したカラダのパワーを絞り出して、最後スパートかましてやる。

シャモニーに、帰れるんだ。

ゴールが、待っているんだ。

 

つづく

UTMB完走記 16:ラスト、一山

 

ラスト、一山。

最初4kmほどはゆるやかに登った後に、

一気に激しい登りが山頂まで4km続く。

 

カラダ中の酸素を出し入れするくらい、

全力で呼吸を繰り返し

「とにかく、ゼッタイに休むな。登り続けろ。」

と、足の運びを繰り返していく。

 

時々、

「あれは…星…じゃないよな。」

と、あり得ない高さに揺らぐヘッドライトが目に入るも

「大丈夫だ。ひたすら登っていれば、必ずあそこにたどり着くのだ」

と言い聞かせ、ただ、カラダを動かし続ける。

 

徐々に、登る「道」が、「岩」に変わっていく。

時々、ライトで周囲を探さないと、どこを登ればいいのかわからないほど

「コース」ではなく、「険しく広がる岩場」が続いていく。

そして、両手で岩をよじ登り、足をかける場所に悩むほどの難所を乗り越え続け

ようやく、ピークらしきところへと辿り着く。
「ここ、地球だよな(´・ω・`)?」

と思われるほど巨大な岩に囲まれた中で、

コースの行き先を示す蛍光ランプが見えても、

そこまでどうやって辿り着くのかわからないようなガレ場をひたすら越えていく。

 

山頂には、ゼッケンチェックのスタッフと、スタッフ用の小さなテントが有るはずだ。

 

が、すでに山頂に辿り着いたと思われてからしばらく小さな登り降りを繰り返しても

なかなか、山頂と思わしき明かりが見えてこない。

それどころか、さらに随分高い所に、ヘッドライトのゆらめきが見えてくる。

まだ、登りが待っているのだ。

いくら距離が残されていようと、

どれだけ「もう登り切ったハズ」の先に登りが待っていようとも、

もう、ひたすらに踏ん張り続けるしかないのだ。

もう、永遠に続くのではないかと思っていた岩場の先に、

ようやく、ラストエイド、159.9km地点  LA FLEGEREに3日目の朝4:46に到着。

この時点で551位。

DSC00067

「やっとついたー!!」の図

 


ラストエイドにて自分撮り。眠気は無いものの、目がトロンとしていますw

あとは、約8km、シャモニーに向けて800m下りまくるだけだ!

ここしばらく、ひたすら岩場と登りで、走れていない。

最後は爆走してやる!

エイドを短めに済ませて、コースへと復帰。

 

少し行くと、ついに、シャモニーの街が見えてきた!!!

実はレース中盤から左足首のあたりに痛みを感じており

特に下りで足を着地する際には痛みが増すのだが

「大丈夫。痛みとか、感じてないから」と誤魔化し続けてここまで来ていた。

最後は、得意の下りで一気に駆け抜けたい。

足の痛みをまたもや誤魔化し、次々と選手を抜いてペースを上げていく。

ここまでやってこれたんだ。

あとは、足が多少どうなったって、爆走を続けてやる。

 

そうして、ついに、シャモニーの街に入っていく!

この地を、3日前に旅立って、ここに来る時を思って

いままでずっと、走り続けてきたのだ。

そして、無事、戻って来れたのだ!

こんなに嬉しいことはない!!

朝の6時頃だというのに、

あちこちで、応援の人が待っていてくれている。

UTMFのゴールは、夜中1時頃で、ほとんど人がいなく寂しいゴールだったので

できればUTMBでは、大量の観客に囲まれてゴールに駆け込みたいとは思っていた。

でも、そんなのは、いいのだ。

無事に、シャモニーに帰ってこれたのだ。

そしてUTMBを完走できるのだ!

 

 

ゴーーーール!!!!

回れ右して、コースに、一礼。m(_ _)m

 

いやーー、長かった!!! でも、楽しかった!!!!

思えば、コロラドでのリタイアから、ここまで

常に不安との闘いでもあった。

でも、やれたんだ!

こんなに、嬉しい事はない

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シャモニーに入りゴールまで。

結果は、37時間34分25秒。順位は521位。

タイムは目標の38時間以内だったけど、順位は正直もっと上にいけると思っていた。

でも、これが、世界の層の厚さなんだ。いい経験になった。

最初のチェックポイントでは2013位からスタートし、

全エイドステーションで順位を常に上げ続け、計1500名ほどを抜いてこれたのは

いい自信につながった。
UTMB2013結果
各チェックポイントの通過時間と、その順位(POS.↑の部分)。

まだまだ、やれるハズだ。伸ばせるハズだ。

いやーーー、つかれたーーーー!!

3日ぶりに、フロ入って、寝たいぞ!!

まだテンションが上がって眠く感じないのだけど、

まる2晩、一睡もしてないのだ。

あ、あと、2週間ガマンしてきた、酒だ!!

忙しくなるぞー( ・∀・)!!!!

 

つづく

UTMB完走記 17:祭りが、終わる

 

完走後、ひとっ風呂浴びた直後から、

急激にモーレツな眠気に襲われた。

そりゃ、そうだ。

まる3日間、一睡もしていないどころか、37時間半も走り回っていたのだ。

眠くならないハズが無い。寝ないと死んじゃう(´・ω・`)。

とはいえ、3時間ほどの仮眠で、またもやテンションマックスからか目覚めてしまうと、

今度は、震えが来るほどに、お腹が空き出す。

レース中、2万5千キロカロリーほどを消費しているハズだが、

どうやっても、そんなに補給できてないはず。

手にしびれが来て、危機感を生じるほどに空腹を感じるのは、

かつて無い経験だ。おそらく、低血糖症になっていたのかもしれない。

食事を済ますと、ようやくゲンキが戻って、ゴール近くへと応援に向かう。

 

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ゴール直前は、こんなオープンテラスでみんなが飲みながら応援してくれているのだ。

僕も、2週間ぶりのビールをいただきながら、大声で応援。

ツラそうで、フラフラになりながら歩く選手。

ラストスパートで苦しそうに走る選手。

ずっと選手の帰りを待ってくれていた家族と手をつなぎ帰ってくる選手。

みんな、とても素晴らしい顔で帰ってくる。

その姿を見ていて、思わず目頭が熱くなり、涙が止まらない。

 

みんな、あれだけのタフなコースを、

最後まで、諦めずに、帰ってきたのだ。

どれだけ、大変な想いを乗り越えてきたことなのだろう。

同じ道程を超えてきたものだからこそ、その想いもアツくなる。

 

そして、いよいよ、制限時間の46時間が近づいてくる。

ゴール地点では、

残り数分のギリギリになっても、多くの選手が必死に駆け込んでくる。

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時間内完走を遂げて、奥さんとハグする選手

 

そして、会場の拍手がひとしきり大きくなり

 

最後のランナーが、両脇を抱えられながら、ゴールに帰ってくる。

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感動で、コトバにならない。

一番最後に帰ってきた選手こそが、

一番長く、コースで闘いぬいた選手なのだ。

 

 

そして、トップ選手ら、入賞者たちが、順番に表彰台に呼ばれ

多くの観客に囲まれ、賛美を浴びるなか、

さきほど、最後のランナーとして帰ってきた選手も、表彰台へと呼ばれ、

主催者のカトリーヌに抱えられながら表彰台へ上がる。

トップ選手たちも、会場も、割れんばかりの拍手。

 

なんて、素晴らしい舞台なんだろう。

感動で、ただただコトバにならず涙が頬を伝う。

 

世界中の選手たちが憧れ、この地を目指す理由が、ここにあるのだろう。

テレビや本で知っていたUTMBとはまったく違った舞台が、ここにあった。

 

ここには、たった者にしか味わえないものがあるのだ。

本当に、この舞台を目指して、よかった。

そして、無事完走することができて、よかった。

さらに、なにより、世界の広さを思い知れて、よかった。

まだまだ、伸ばせるはずだ。やれるはずだ。

そういう自信も得ることができたのだ。

 

こうして、ひとつの、長い、長い大きなお祭りが、幕を閉じた。

 

さぁ、次は、どんな舞台に立てるのだろう。

どんな自分に出逢えるのだろう。

 

さっ、また、走ろう!!

 

おわり

UTMB2013の自撮り動画を元にした動画集がYouTubeにて公開されております。

サポート頂いた、中尾さんと小柴さんファミリーによる映像も加え編集頂きました。

2-3分×7本となっておりますので、ぜひコチラからご覧ください。

 

【 書籍を出版しました】

マラソン中毒者_(帯付) small4

「マラソン中毒者(ジャンキー) 北極、南極、砂漠マラソン世界一のビジネスマン」
(小野裕史著 文藝春秋刊 1,575円)

 35年間、超インドア派で運動とは無縁だった。
中高と、部活は吹奏楽部。
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そんな僕が、仕事でもなく、単なるダイエットで始めたランニングをキッカケに
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