Stage5 再び訪れる悪夢、そして。。


いよいよ、今日は、実質最終のロングステージ。
これまで4日間、いろいろなコトがありながら、
みんな、毎日40km程サハラを超えてきた。
そして、今日~明日とオーバーナイトで
86.4kmの道のりを進むコトになる。
これをクリアすれば、後は明後日、
ピラミッドのふもとのゴールまで2km弱のファンラン。
今日が、実質最後なのだ。
テントにて、しっかりとシューズを締める
$Keep Challenging
(RacingThePlanet Official Photoより)
スタートに集まるみんなの顔つきも、心なしか緊張感がある
$Keep Challenging
そうして、ロングステージがスタート。
今日のコース上には、約10kmおきに、8つのチェックポイント(CP)がある。
各CPで水を貰えるが、約50km地点のCP5では
お湯も出て、行動食以外の食事も取ることが出来る。
まずはCP5まで6時間30の目標で、歩かずに走り続けよう。
調子が良ければ、そのまま最後まで、19時(計12時間)にはゴールしよう。
そう目標を決めて走りだす。
走り始めてすぐに気がついたのは、
「今日は、いつもと風景が違う」こと。
いつもは、あまり見かけない選手が、上位の方に来ているのだ。
僕のテントメイトのAnthony
$Keep Challenging
彼は日々、10位~15位でゴールしてたのだが、この日はずっと最後まで追いつけない所か、
僕よりはるか先に行ってしまった。
一歩も歩かない、とても強いランナーだ。
そう、みんな「今日がラスト。勝負のステージ」と計算し
ここまで足を残してきているのだ。
CP2までは僕も順調に足を運ぶ。
昨日まであった気持ち悪さもなく、足もしっかり残っており、
2年前に憧れでしかなく、想像だに出来なかった
「いま、自分は、この大サハラ砂漠を走っているんだ」
という喜びと感謝で胸いっぱいに走る。
が、CP2-3間で、突如、昨日と同じ
気持ち悪さが生じてくる。
あわてて、伝家の宝刀「ガスター10」をゴクり。
「昨日だって、吐き気がありながらも、ガスター10で歩かずにゴールまで行けたんだ。大丈夫だ」
が、CP3が近づくにつれ、どんどん、気分が悪くなっていく。
「一度でも歩いたら、歩きグセが出る」
「ダメだ。ゼッタイ、歩いちゃ、ダメだ」
しかし、ほぼ吐きそうになった瞬間に、ついに歩いてしまう。
そして、強くなる吐き気を何とか抑えながら、徐々に歩くスピードすら落ちて行く。。。
そして、どんどん、今までに抜かれたコトのない選手たちに抜かれていく。
しゃなに抜かれていく。
$Keep Challenging
砂丘の稜線を超えていく、本来最高の景色のコース。
前にポツリと見える点は、先を行くしゃな。
そして、サハラレース中一度も抜かれたことのなかった黒ちゃんにも抜かれ。。
自分の足が止まってしまったショックと、
他の選手たちに抜かれていくショックと、
「ゴビのロングステージでもヘマして大ブレーキになったのに、今度もまたかよ!」
という悔しさで一杯になる。
全く走れないまま、歩き通しで、なんとかCP5へ。
CP5に着くなり座り込んでしまい、スタッフからも心配そうにされてしまう。
「もう、順位なんてどうでもいい。とにかく、しっかり食べなくちゃ」
予定ではナッツ等の行動食でゴールまで持たせる予定だったが、
ナッツが食べれない以上、唯一お湯がもらえるこのCPで、
アルファ米を食べていくしかない。
アルファ米をお湯で戻すには15分かかるが、そんな、タイムなんて気にしている場合じゃない。
むしろ、15分ゆっくり休ませる言い訳を創ろう(じゃないと、焦ってCPを出て、もっとヒドイことになりかねない)
CP5でゆっくり過ごすうちに、イタリアンカルテットはもちろん、
たくさんの選手達が、休みに来ては、次のCPへと旅立っていく。
「チベとか、信ちゃんとか、来てくれるまで待とうかな?」
「来たら、一緒に歩いてもらおうかな」
どんどん、気持ちが弱くなっていく。
なんとか、アルファ米を喉に流し込み、
諦めて立ち上がり、次のCPへ歩き出す。
が、せっかく15分待って作って食べたアルファ米も、
しばらく歩くうちに、少し戻してしまう。
「食えないと、走るどころか、歩けない・・・」
吐いてしまった不安とショックで、さらにココロが折れそうになる。。。
水を飲むのも気持ちわるいけど、飲まなきゃ、死んじゃう。。。
「なんで、ゴビに続いて、最後に失敗するんだ」
「これまで、せっかくいい順位で、日本にいるみんなも、喜んでくれていたのに・・・」
「もう、帰国したら、オレ、ランニング、やめようか。。。。」
肋骨にヒビが入っても、翌週フルマラソンで自己ベストを更新したこともあり
「骨は折れても、ココロはオレない(`・ω・´)」なんて言っていた頃もあったっけ。
もう、ほぼ、完全にココロが折れる。。。。
CP2の途中からCP6まで、6時間ほど、そんな闘いが続く。
そうして歩き続けるうちに、少しずつ、体調が戻ってきた!
だまし、だまし、少し走ってみる。
「うん、いけそうだ!!」
「もう失ったタイムを取り戻すには余りに遅いけど、やれるだけ、やってみようじゃないか!」
そうして、CP6を過ぎてから、爆走を開始。
ひったすら、走る。駆ける。
このレース中、最も速いペースで、走る。
「これまでの悔しさを、全部ぶっつけて走ってやるんだ!!」
もう、二度と歩かないように、これまでとっておいてiPodを取り出す。
このiPodには、お気に入りの曲がいくつかと、最後に、ゴビの壮行会の時に
みんながオレにくれたメッセージが録音されている。
ゴビのロングステージで倒れた時も、このみんなからのメッセージを聞いて頑張る積りだったけど
なんとiPodの録音ミスで、この大事なメッセージをゴビでは聞けずじまいで、ここまで来た。
「そのまま聞かずに、サハラで困った時に、みんなからの声を聞いて勇気をもらおう」
そうして、大事にとっておいたものだ。
ゼッタイに、歩かない。
次の曲が終わるまで、歩かない。
終わったら、その次の曲が終わるまで、歩かない。
ハイペースで飛ばすと、苦しい。
常に、歩きたくなる。
でも、さんざん、歩いたんだ。今は、走れるんだ。
今、走らずに、いつ、走るんだ!
「みんなからのメッセージが流れるまでは、ゼッタイに爆走し続けてやる!!」
CP6からCP8まで、ひたすら飛ばし、
今まで抜かれ続けた選手を次々に15名ほど、抜かしていく。
これまで4日間毎日、僕が抜かす一方だったイタリアンカルテットの面々も、
CP5で初めて彼らが僕を抜かす時、心配そうに声をかけてくれてたのだが、
爆走して彼らを追いかける僕を見てリーダーのPaoloが満面の笑で
「チャオ!」とハイタッチしてくれる。
嬉しい。泣きそう。でも、泣かない。走るんだ。
$Keep Challenging
イタリアンカルテットの4名は、常に一番苦しんでる選手の手を引いたり
助けあいながら、とても強い走りを最後まで続けた。
爆走しながら次から次へと曲が流れ、iPodは
ついにゴビ壮行会の時の、みんなから録音されたメッセージへたどり着く。
3ヶ月前、僕が初めての砂漠レースのゴビ砂漠に旅立つ時の応援メッセージが、
一人ひとり、流れていく。
涙が、止まらなくなる。
たくさんの仲間からの、たくさんの想いがつまったメッセージ。
「小野チン、頑張っているか?辛いか?でも、みんな日本で楽しみに待っているぞ!」
「小野ちゃんのことだから、爆走して入賞とか狙っちゃえよ!!」
既に陽は落ち、真っ暗闇に包まれた砂漠の中、
ひとり、号泣しながら、爆走し続ける。
「こんなにも、みんなの想いに支えられて、オレは走れているんだ」
そんな嬉しさと、
「こんなに、期待をしてもらっているのに、自分はなんて情けない姿をしていたんだ」
そんな悔しさと。
「でも、真っ暗な砂漠の中、号泣しながら爆走するなんて、アホすぎるぜ」
今度は、泣きながら(・∀・)ニヤニヤしながら爆走。
誰か人が見ていたら、ゼッタイ、ヘンタイと思われただろうな・・・
最後のチェックポイント、CP8を過ぎ、あとゴールまでは10km程!
最後まで爆走を続けてゴールしてやるぜ!!
途中、かなり前に抜かれた黒ちゃんと、同じく日本人選手の中村さんが
暗闇の中歩いているのを見つける。
一瞬「このまま3人でゴールしようかな?」と迷うけど
「ゴメン!最後まで走っていいかな?」と断り、ゴールへ駆ける。
「かなり、タイムも取り戻せたかも。ひょっとして、まだ10位以内も夢じゃないのかも」
「またゴビの時みたいに、ロングステージでヘバったまま終わるんじゃなく、
今度は、最後カッコ良く復活爆走でゴールしてやるぜ!」
しかーーーし!
神様は、そんなにカッコ良く終わらせてはくれない。
ゴールまで、あと7km程になったあたりで、
急に体から力が抜けていく。
気づけば、お腹がペコペコ。
時間はもう19時過ぎ。昼も少し吐いたし、全然エネルギーをとれてないじゃんか。
食べたら、また気持ち悪くなるトラウマがあり
食事をするのが怖かったが、まだ40分程走らなければ。
残していた行動食のナッツを食べてみる。
「やっぱ、気持ち悪い・・」
またもや、悪夢の再開。
またしても、歩いてしまう。。。
悔しい! ちくしょう!!!
最後は、ハンガーノック気味でフラフラになりながらゴールへ。
昨日までの4日間は、ゴールはアホな格好で決めていたのだが、
この日はゴールするなり倒れこんでしまう。
$Keep Challenging
すぐにAlinaらスタッフに担がれ、メディカルテントへ。
しばらく、手足の震えが止まらない。
ドクターに薬をもらい1時間程横になり、先にゴールしていたしゃなに
コーンスープを作ってもらう。
(そういや、ゴビでゴールで倒れこんだ樺澤さんに、コーンスープ作って、ゲンキになっていたっけ)
ぼんやり、そんなことを思い出しながら。
しばらくテントで休んでから、徐々に体にゲンキが戻り(コーンスープすげーぜ!)
もう一杯コーンスープを飲み、他の選手たちの帰りを待ち受ける。
$Keep Challenging
僕は倒れていて出迎えられなかったけど
黒ちゃんと中村さんもゴール!
そして、信ちゃんもゴール!
信ちゃんと僕で出迎える。よく頑張った!!!
$Keep Challenging
仲間が戻って来るのを見届けるほど嬉しいことはない!
他のみんなの帰りも気になるものの、
僕自身もまだヘロヘロだったので
さすがにテントに戻り、泥のように眠りにつく。
そうして、僕のサハラステージ5は終わった。

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