ジャングルマラソン「未」完走記11:モーターバイク


 

ステージ4をなんとか完走し

明日に向けてハンモックの準備をし、

とある選手Yと談笑していた時の事。

彼は非常に有能なランナーで、

しかもいつも明るくステキな笑顔を絶やさないタイプ。

そんな彼が、少し困った表情で、低めの声で話しだした。

 

「今日のコースで、大きな下り坂に続いて、長い急な坂道が続くコース、あったよね?

実は、あの道に差し掛かった時、

ブラジル人選手のXが

モーターバイクで坂を登っていくのを見てしまったんだ。」

 

「えっ(;・∀・)!? モーターバイク??

あの、ステージ2から急速に順位をあげてきている、Xのことだよね?」

 

 

どうやら、Xはこのレースの地元に住んでいるらしく

(密林地帯に3つだけある小さな集落出身らしい)

実は過去の大会でも何回か地元のサポートのもと、

ズルをしているのでは? と疑惑を受けていたとのこと。

 

確かに、この大会では、ステージ1から

コース中に突如現れる秘密のチェックポイントが用意されており、

そこでタイミングチップで電子的に計測するとともに

手首に紙を巻いて印を付けるルールを課せられていた。

 

秘密のチェックポイントを通らず、

印が無いままゴールをした場合はペナルティを失格になるのだ。

 

レース前にそのルールを聞き、タイム計測係のDavidに

「いままでの大会で、こういうのは無かったのに、なんで?」

と聞いたら

「ショートカットとか、ズルをしないためなんだよ」

と教えてくれた。

 

こんな密林で、どうやってショートカットできるんだ(´・д・`)?

 

と不思議に思っていたのだが

土地勘がある人にとってはショートカットをしたり、

地元の友人にサポートしてもらうのも可能なのかもしれない。

 

たしかに、必須装備の荷物チェックも、

ゴール直後にほぼ毎日のように行われており

「随分と、厳しくチェックされるな」

という印象はあったのだが。

 

結局Xは、ステージ4で失格となり、

キャンプ地から地元へと帰らされたようだ。

 

他の選手ならば、「キャンプ地から退場」と言われても、行く宛も手段も無いのだが、

地元の彼は知人のモーターバイクに載せられてキャンプ地を去っていった。

 

Xは明らかにアスリートなランナー体型で、

普通にレースを続けても十分よい順位を狙えるだろうに

なんてもったいないんだ。

 

最初は、

 

「モーターバイクって、ギャグみたいじゃん(;・∀・)」

 

と苦笑していたのだが、

レース上で、毎日のように彼とすれ違い、

順位も肉薄しながらも、

同じランナー同士として、同じ闘いに挑んでいたと思っていた僕は

キャンプ地を去る前に事務局となにやら激しく言い合いをしていたXの姿を思い出し

次第に複雑な気持ちになっていく。

 

 

そして、もう一つ複雑なのは

夜になっても、僕のオシッコの色が赤いままだったこと。

 

レースが終わり、たくさんの水を飲み続けてもう何時間も経つというのに。

 

再度ドクターに相談すると

「ひとまずは、とにかく水を飲み続けること」とのこと。

朝になれば収まるかもしれないが、どこか、身体を壊しているのかもしれない。

 

でも、せっかくステージ4もゴールできたのだ。

あとは、なんとかステージ5をクリアすれば、ほぼ完走だ。

明日のステージ5は朝4時半スタート。朝3時には起きなければ。

 

しっかりと水を飲み、午後7時にはハンモックに潜り込んだ。

 

その後、とてつもなく「長い、夜」が待ち受けているとは知らずに。

 

つづく

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